WinKITの若き戦士達
WinKITは2002年から3年連続準優勝でしたが、今年は準々決勝で世界有数のエレクトロニクス企業フィリプスにPK戦の末、惜しくも破れベスト8に終わりました。
今年はロボット6台が新型に切り替わり、昨年の主力メンバーも抜け、学部2年生が2名もフォワード、サブフォワードという攻撃の要に大抜擢されるなど大きな変化がありました。予選では多くの試合を1点差でなんとか勝ち、尻上がりに調子を上げてきましたが、準々決勝では超ど級キックを誇るフィリップスに前半1点をリードされるものの、後半ロスタイムに1点を返しPK戦に突入しました。しかし、健闘もそこまででPK戦では相手の超ど級キックにキーパーが微動だりせずに敗れてしまいました。キック力の差が明暗を分けました。
敗因を分析すると、1番の原因は工程管理の甘さです。新型ロボットの完成が予定より2ヶ月遅れ試合開始1週間前にやっと完成し、6台でセットプレイを確認したのが出発前日です。これで勝てるほどRoboCupは甘くありません。
2番目の敗因は主力メンバーの世代交代です。今まで主力だった上級生が抜け、フォワード、サブフォワードを担当したのがなんと学部2年生です。彼らがいかに優秀でもたった1年のキャリアでRoboCupの強豪チームには勝てるわけがありません。強豪チームの主力は院生や社会人なのです。これは夢考房プロジェクト全体にいえる構造的な問題です。旧帝大や慶応、早稲田では研究開発の職に就きたい学生は大学院へ進学するのがあたりまえになっています。夢考房の学生はモノ創りが好きなわけですから研究開発職を目指すためにも是非大学院へ進学して自分のチャンスを広げて欲しいと考えています。
上記のような敗因はありましたが、WinKITは準優勝のFu Fightersに引き分け、優勝したEIGENを苦しめたPhilipsにはPK戦で惜しくも破れました。EIGENはPK戦でかろうじでPhilipsに勝ったのです。ベスト3に入るポテンシャルは十分にあることを示してくれました。WinKITの若き戦士達は自信を失うことなくマネジメントや技術的な問題点を解決し来年ドイツで開催されるRoboCup2006では雪辱を晴らすことでしょう。
通算成績 14得点4失点 5勝1分2敗
一次予選
WinKIT(金沢工大) 2点 VS Jiaolong(中国) 1点
紫:JiaoLong、水色:WinKIT
中国 上海交通大学のJiaoLongとの対戦です。このチームの監督は早稲田大学に留学経験のある方で日本語がペラペラです。
さて、ゲームは試合開始早々にWinKITのフォワードが相手のディフェンダーの間をすり抜け1得点しましたが、その後 相手チームがレフリーボックスに完全に対応できていないのかファールを連発し試合が長い間中断されました。
後半に入るとレフリーボックスが突然不調になったりしゲームになりません。WinKITのロボットも無線不調で数台が退場しディフェンスが手薄になり相手のアグレッシブな攻撃で1点を許しました。このまま1対1で試合が終わりになると思ったときにWinKITロボットが勝負を最後まであきらめなかったのでしょうか?最近の人間の日本代表チームと同じようにフォワードロボットが1得点返すことに成功しました。懸念していた新ルールに十分対応できていないチームとの試合で何とか試合に勝ちましたが厳しい試合でした。
WinKIT(金沢工大) 1点 VS Orient(東洋大) 0点
紫:Orient、水色:WinKIT
KIT(金沢工大)とOrient(東洋大学)の試合ですが、前半1得点を獲得したWinKITが後半この1点を守りきり1対0で勝利を収めました。Orientチームは春季競技会から運動性能の高い全方位移動機構を備えたロボットを開発しなおし本大会に臨んでいます。運動性能ではEigen、WinKIT、Cops、Fu Fighters、Orientのロボットはほぼ同程度のように見受けられます。
そのうえOrientのロボットは守りも固く、WinKITはやや優勢に試合を進めますがなかなか得点することができません。それでも、フォワードはゆっくりボールを敵陣に運び
敵ディフェンスと激しい攻防を繰り広げ何とかゴールを割ることができました。この試合も厳しい試合でした。
10時15分 WinKIT(金沢工大)2点 VS Satrop(イラン) 0点
紫色:Satrop、水色:WinKIT
初出場のイランチームSatropは昨日は全てロボットが動かないため棄権、今日の試合も午前中ロボットを出場させていましたがピクリともしません。ハーフタイムで審判はSatropのロボットは動かないと判断しSatopの棄権となり2対0でWinKITが勝ちました。
13時45分 WinKIT(金沢工大) 1点 VS FuFighters(ドイツ) 1点
紫色:FuFighters、水色:WinKIT
とても緊迫した試合でした。前半、WinKITのフォワードがドリブルで得点したあとはゲームが膠着します。新ルール導入により人間のサッカーのルールと同様にボールをタッチラインやゴールラインから出した場合は、相手方のチームによるスローインやゴールキック、コーナーキックになります。このため、ゲームは頻繁に中断します。6台のロボットには8mx12mのゴールでも狭いのです。
さて、前半はWinKITの1点リードで終了しました。後半開始早々、FuFightersがWinKTIのミッドフィルダーをかわしセンタラインから1mくらいWinKIT陣に入ったところから強力なミドルシュート。WinKITのゴールは少しも動けず1点を失いました。その後、WinKITもFuFightersのゴール前まではボールを運びますが、相手の数台によるディフェンスに阻まれ得点できず試合終了になりました。
1次予選:10時15分 WinKIT(金沢工大) 6点 VS Aros(スウェーデン) 0点
WinKITの得点シーン(紫色:Aros、水色:WinKIT)
Arosのロボットの動きが遅くスピードに勝るWinKITは着実に得点し完勝しました。この結果によりWinKITは1次予選グループDを1位通過しました。
2次予選
14時15分 WinKIT(金沢工大) 1点 VS Robofoot(カナダ) 0点
WinKITのスローイン(紫色:WinKIT、水色:Robofoot)Robofootは今回初参加のチームです。初参加にしては審判用コンピュータ(レフリーボックス)にも対応して動きもそこそこです。
動きに勝るWinKITは圧倒的に敵陣ゴール前まで攻め込みますが相手のディフェンダーもフォワードの行く手を阻みなかなかゴールを割ることができません。このような状態がしばらく続き相手のゴールキックになりました。ところが相手はボールを蹴ることができません。この場合10秒経過後はWinKITがボールを蹴ることができます。約10秒経過後フォワードがすかさずシュート。確実にゴールを決めましたがレフリーが得点を認めません。これは明らかに審判のジャッジミスです。英語に堪能な昨年のチームリーダが審判にクレームし、審判も自分のミスに気がつき得点が認められました。
後半に入ってもWinKITが優勢のままゲームが進行します。ところが相手のキーパーに阻まれ得点できません。結局クレームの結果認められた1点でRobofootに勝利できました。2次予選も簡単には勝たせてくれません。
15時45分 WinKIT(金沢工大) 0点 VS Minho(ポルトガル) 2点
WinKITとMinhoの激突(紫色:WinKIT、水色:Minho)
Minhoは毎年決勝トーナメントに進出している強豪です。このチームはソレノイドを使った強力なキック装置を装備しています。ゴールキックで間単に得点できるだけのキック力を誇っています。WinKITはこの対策を十分とっていましたが、ミッドフィルダー、ディフェンダーで完全にゴールを隠すことができず1点を失いました。
2失点目はMinhoのコーナーキックがキーパーとゴールとのわずかの隙間を通り抜けゴールに突き刺さったのでした。WinKITの完敗でした。それでもMinhoとRobofootの対戦でMinhoが勝利したためWinKITは2次予選を2位通過し、明日からの決勝トーナメントに進出することが決定しました。
今年のルール改正によりロボカップのルールが人間のFIFAルールに近づき強力なキック装置を備えたヨーロッパ勢が断然有利になることが予想され、2次予選ではそのとおりになったのです。明日の準々決勝では恐らくPhilipsと対戦するものと思われます。Philipsも強力なキック装置を有しておりセンターラインからゴール上段に直接シュートを決めることができます。果たしてWinKITがこのチームに勝つことができのでしょうか。WinKITの前途には暗雲が立ち込めています。
決勝トーナメント(準々決勝)
11時:WinKIT(金沢工大) 1点 敗 VS Philips(オランダ) 1点 PK勝
PhilipsのPK(水色:Philips、紫色:WinKIT)予想通りの展開になりましたPhilipsは遠距離から超ど級のロングシュートを打ってきます。WinKITはスピードが速いのが特徴ですが、大きなロボットがすぐプレスをかけてくるのでなかなかスピードを出すことができません。そうこうしているうちにPhilips陣のペナルティマークからPhilipsがリングシュート。2バンドしてWinKITのキーパーの上をこえゴール。これにはなすすべがありません。WinKITにもチャンスがなかったわけではなく前半終了間際にゴールがらあき状態の決定的なチャンスがありましたが、ペナルティエリアに入ったボールをフォワードが押し込めません。
後半に入っても前半と同じような試合展開です。WinKITもボールにうまく回り込みができずボールがタッチラインを割ります。Philipsもロングスローインで直接ゴールを決めましたがスローインはインダイレクトフリーキックなので得点になりません。時間だけがどんどん過ぎていき後半も終了間際、WinKITのフォワードが奇跡的にゴールを決め1対1の同点になりすぐ試合が終わりました。まるで日本代表の大黒選手のようです。
いよいよPK戦です。先にフィリップスが5回蹴り、5本とも決めます。あの超ど級シュートをとめることができるキーパーはロボカップにはいません。WinKITの番になりましたが1回目でPKを外しここでWinKITのRoboCup2005は終わりました。
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