前の記事で大学院制御系設計解析統合特論の最終発表会・講演会でZMPのRoboCarを使ったミニレースがあったことを紹介しましたが,ここではもう少し深く掘り下げて説明します.
RoboCarミニレースは上にある講義塔の4階を約1週するコースを自律で走行するものです.
準備時間としては講義・演習時間を含めて約140時間,そのうち,実機を使い走行実験並びにパラメータを調整できた時間は14時間しかありません.時間の内訳は,開発環境を含めたロボットを動作させる環境作りが4割,プログラムの開発に約1割,デバッグに4割,実機を使った実験に1割ということでした.
これはまさに「つくばチャレンジ」と似ています.demura.netチームは金沢から参加しましたが,遠方のためなかなか試走会のためにつくば市まで行けません.この講義でもRoboCarを使い実際の環境で実験をできた時間が全体の1割と非常に限られていました.
また,5チーム参加して2チームが完走しましたが,その2チームはデッドレコニングなどを使い自己位置を推定していませんでした.これも,つくばチャレンジ2009では完走したチームがGPSを使わなかったことと非常に似ています.RoboCarミニレースで完走したチームは今回のコースを前提にした壁沿い走行,あるいは,レーザスキャナからの情報を頼りに地図のローカルな情報を使ったif thenルールのお化け(1000分岐)による力づくの方法でした.
これらの結果は,GOFAI(Good Old Fashioned Artificial Intelligence)では実環境にうまく対応できず,New AIによる方法といえるかもしれません.あるいは言葉を変えると,限られた時間で目的を達成するために選んだ戦術の勝利といえるかもしれません.
demura.netチームは残念なことにデッドレコニングをベースとした極めてオーソドックスな方法(王道?)で臨みましたが,ドリフトが大きすぎるジャイロが禍してか完走はなりませんでした.
最近ロボットのセンサとしてレーザスキャナが多く使われるようになり,ロボットの外部世界を3次元的に正確に内部に再構築できるようになりつつあります.はたしてそのような正確が3次元地図をロボットが持つ必要があるのか?あるいは,そのような地図を持つことができてたしてロボットが我々の生活空間で自由に安全に動き回ることができるか?という疑問が生じます.
つくばチャレンジはそれを確かめる社会実験といえるかもしれません.どちらのアプローチを取るかは参加者の自由です.
でむ
コメント
やー、LRFオンリーというのはよいですね。
1000個のifは、デバッグがしにくいので避けたいですが、それもツール(地図作成ツールとか移動経路作成ツール)を実装する時間がとれれば解決する問題でしょうし。
RoboCarの発表をみたとき、やっぱZMP高いなー、買えないなーと思いましたが、教育にはとてもよいですね。1人月弱(1人月=160時間)で自律移動ロボットが作れるなら楽しい。
ちなみに5台参加とのことですが、1チーム何名ですか?