RoboCup2011が7月11日に終わりました.世界大会へ出場したRoboCup Junior Japanのメンバーがロボカップジュニアの夏合宿に参加して,世界大会報告をしてくれました.サッカーAライトウェイトリーグの内容を紹介します.
世界大会(サッカーAライトウェイトリーグプライマリ)の結果を次に示します.
- スーパーチーム
1位: Reverse(日本), EMM‐CF(中国,マカオ),KYA Macau(中国 ,マカオ)
2位: Submarine(台湾),Qi Tian Da Sheng 2(中国), Jing’an No. 1(中国)
3位: GAKIDAYSYO(日本),Belle(台湾), Nanyang 2(シンガポール) - 単一チーム
1位: EMM‐CF(中国,マカオ)
2位: Jıng’an No.1(中国)
3位: Nanyang 2(シンガポール)
スーパーチームというのは,国別の混成チームで競うもので,ロボカップジュニアの大きな特徴です.チームで協力するためには,英語でのコミュニケーションが不可欠です.子供のうちから,海外の子供とそのような機会を持てることは英語や交渉力の必要性を実感することができるので本当に貴重だと思います.
さて,スーパーチームでは,日本のReverseが1位,GAKIDAYSYOが3位に入っていますが,単一チームでは表彰台に上がることができませんでした.ReverseとGAKIDAYSYOは本当に良くやってくれました.夏合宿でのReverseの報告によると,日本のジュニアと中国やシンガポールのトップチームとはレベルが1段違うということでした.Reverseの分析によると次の点で日本が劣っています.
- スピード&キック力
ハードウェアの性能で圧倒的に負けています.最高速度&加速度,キック力の面で負けています.中国チームのキック力は凄まじく,決勝戦で中国のキック装置がマカオチームのオムニホイールを粉砕したそうです.
中国チームはハードウェアが優れているだけではなく,ソフトウェアについても優れているそうです.この理由は,ハードウェアに関しては中国製の強力なキットを使い,ソフトウェアに専念する方式をとっているそうです.面白いことに,大人のロボカップでも,ヒューマノイドリーグは今年,DarWin-OPという製品を使ったチームが優勝しています.ヒューマノイドの場合はハードウェアの開発がとても難しく,多くのチームが歩行制御させるだけで力尽きて試合に臨んでいます.ロボットは優れたハードウェアと優れたソフトウェアがあって初めて,優れたロボットになるので両者のバランスが重要なのです.
では,ロボカップジュニアではどうすれば良いか?
ロボカップジュニアの目的は勝ち負けではなく,どれだけ多くのことを自分で考え学ぶかということなので,両者をバランス良く学んでいけばいけば良いと考えます.
現在の科学技術は高度に発展し専門化,細分化が進んでいます.ロボットはそれらをつなぐものだと思っています.将来無限の可能性がある子供に,ハードだけ,ソフトだけと方向を制限してしまうことは,ロボットを学ぶ意義を薄めることだと考えます.
21世紀のレオナルド・ダ・ヴィンチたれ!
でむ
コメント
世界各国のジュニアサッカーはグリーンカーペットにパルスボールですが、
日本のサッカーAライトウェイトは、未だにグレースケールと定常光ボールで
世界各国と2年遅れです。
世界大会に出るAライトのチームは大変なハンデを負うのが日本の現状です。
2012年のメキシコの次に日本が名乗りを上げているそうですが、
まさかグレースケールのまま日本で世界大会をするなんてことは無いので
少なくとも2013年までにサッカーAもパルスボールとグリーンカーペットに
変わるでしょうね。
サッカーAがんばれさん
コメントありがとうございます。
2012年のジャパンオープンは決まってしまったので、2013年は世界標準になってほしいと思います。スーパーチームだけではなく、個別チームでも日本から世界チャンピオンが誕生して欲しいですね。すばらしい子供が多いのですから。
でむ
夏合宿ではお世話になりました。
ちょっと誤解があるかもしれませんが、海外勢もキットそのままに見えたのはシンガポールチームくらいで、中国、マカオ等も強力キットのパーツを使いつつオリジナルの機体を作っていました。ただ、フレームやエアキッカーなどの技術は相互供与されているのか、上級生チームと共同開発なのか、どのチームも似たものを使っていたのは確かです。この辺が日本チーム(大きなチームでなければ先輩からの技術継承がなく、ほぼ個別のチーム毎に技術開発している)と違うところでしょうか。
さらに日本チームが不利なのは、ジャパンと世界での適用ルールの違いです。特に定常光ボールからパルスボールへの対応はセンサを自力制作する必要がある現状では致命的です。加速と最高速の違いはもちろんありましたが、それよりもボールへの反応の第一歩がワンテンポ遅れること、ボールの方向・距離の判定精度が低いことが大問題でした。この辺はロボット完成後に動きの作りこみ・精度アップが必要な部分ですが、日本大会後の1カ月では時間が足りません。時間があればもう少し肉薄できたかもしれませんが...(実際ジャパンの構造を維持したガキ大将はいい動きをしていました)。来年世界に行くライトウェイトチームには情報提供したいと思います。
もう一点、強い海外チームとの決定的な違いは、キーパーロボットの精度です。今回の上位チームに共通するのは、「ほぼ完璧なキーパーロボットがいた」ことです。予選9試合で失点わずか2点とか。キーパーが弱いチームからは得点できても、上位チームからはそれなりのキック装備がないとほぼ得点することは不可能でした。この点、日本のチームにも参考になるのではないでしょうか。まずは完ぺきなキーパーロボで失点を防ぎ、相手のすきをつけるFWを考えるとか。これを見たチームが来年のジャパンでいい試合を見せてくれるのが楽しみです^^
Reverse父さん,
大変貴重なコメントありがとうございます.とても参考になりました.特に,パルスボールのセンサまでは全く手が回っていないというか,ジャパンオープンでは必要ないので考えていませんでした.
床がグレースケールとカーペットの違いも大問題だと思います.摩擦係数が違い,グレースケールを傷つけてはいけないという制約があるため,ボールセンサだけでなく,タイヤも替える必要があると思います.試しに,家にあるコートをグレースケールからパンチカーペットに替えたところ,タイヤが滑るためロボットの速度が遅くなりました.
ジャパンオープンが終わってから,センサとタイヤを変更していては間に合わないでしょう.ジャパンオープンと世界大会のルールが同じにならないと,日本チームは苦戦しそうですね.
でむ