今年のロボット学会特別講演は青山学院大学の福岡伸一先生による「生命を解くキーワード、それは動的平衡」でした。
ロボット学会の特別講演は毎年非常に面白い話が多く良い刺激になります。福岡先生はとても文才のある方で、「生物と無生物の間」は60万部のベストセラー、今年の7月に発刊された「世界は分けてもわからない」はすでに15万部を突破しているそうです。
私はロボカップ世界大会へ向う飛行機の中で退屈しないように、たまたま成田空港の書店で購入したのが前書でした。分子生物学の歴史やポスドクの悲哀などもちりばめられ楽しく読むことができました。動的平衡の考え方は福岡先生のオリジナルではなく、ずいぶん昔に提案されたということを聞きますが、私には新鮮に感ぜられました。ということもあり、講演は楽しみでした。
講演の内容は、「世界は分けてもわからない」に書いてあることとほぼ同じでした。部分を見ているだけでは全体はわからず、部分と部分の相互作用を理解することにより初めて全体がわかるという趣旨のことを、絵画「コルティジャーネ」と「ラグーンのハンティング」の例を出し分かりやすく話して頂けました。
また、「世界は分けてもわからない」にマップラバーとマップヘイターの話があります。マップラバーとは地図大好き人間で、常に地図上ので自分の位置がわかっていなければ気が済みません、一方、マップヘイターは地図を見るのが嫌いな人間ですが、不思議と迷わず目的地に行ける人です。ロボット工学でいうと、前者はGPSなどで大域的自己位置を常に求めているロボット、後者はビューシークエンスで自己位置を求めているロボットに相当すると思います。つくばチャレンジ2009を完走するためには両者の能力が必要なのだと、その本を読んでふと思いました。
でむ
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