背 景
工学と科学の違いは何でしょうか?よく一般にいわれることは科学は「神が創ったものを知る」学問であり、工学とは「ものを創る」学問で す。科学者(サイエンティスト)の中にはは工学者(エンジニア)を低いものとして見る人もいますが、決して貴賎があるわけではなく21世紀は両者が協力していく時代です。
話を戻して、工学は新しいものを創造する学問なので講義で各種理論を習い断片的な知識を得るだけでは十分に身に着けることはできません。習得した理論や知識を有機的に関連付け,実際に「もの創り」に関する一連の過程を経験することで初めて工学を理解することができると 私は考えています。言葉を変えると工学は体得するものなのです。
金沢工大では上述した理念の基,課外時間に学生が「もの創り」を実践でき「夢を考えて形にする場」さらに「知的な感性工作空間」として,1993年7月に夢考房を設立 しました。夢考房では学生が積極的に「もの創り」を実践できるように以下の事項を提供しています。
場
夢考房は学生が授業後や休日に自由に使用可能なように年間340日,通常は平日午前8時45分から午後9時まで,休日は午前9時30分から午後5時まで開館し,申請すれば24時間利用可能な体制を取っています。なお,夢考房関連施設は2棟あり延べ床面積は3000m2で す。
施設では以下の道具や材料を提供しています。 工作機械:旋盤,フライス盤,ボール盤,板金,溶接,木材・樹脂加工機械
プリント基板:ドリラー,プロッタ,エッチングマシン,ソルダマスクステーション
計測機器:テスタ,オシロスコープ,ノギス,マイクロメータ
プレゼンテーション機器:コピー機,ビデオ編集器,プリンタ,A0プロッタ
パーツショップ:電子部品,工作部品,加工用素材
技 師
夢考房の特色は何といっても約20名の優秀で人間的に素晴らしい常勤技師達です。彼らは(女性もいます)金属加工,電気,溶接,板金,木工,工業デザイン,FA,マイコンなどの専門家です。また、多くの技師が本学のOB、中には夢考房のOBもいます。そういうこともあるのでしょうか、学生は技師から「もの創り」に関する技術的アドバイスを懇切丁寧に受けることができます。
安全対策
モノ創りの現場で最も重要なことは安全です。夢考房では安全管理に関しては万全を期しています。具体的には,旋盤,フライス盤などの工作機器を使用するためには安全講習会などに参加して各機器の学内免許を取得 しなければなりません。さらに,頻繁に技師が安全パトロールを実施し自由に使用できる雰囲気を維持しながら,安全な工作環境を作り出すよう努力しています。
また,イエロージャンパーと呼ばれている約25名の学生スタッフも安全管理に大きな役割を果たしています。彼らは安全管理者代行として辞令を交付され,工具や部品などの在庫管理の業務はもちろん,一般学生に対して工作機械の安全な使用法を説明したり,場合によっては注意を促したりなど しています。彼らは今や夢考房にとって不可欠な存在となっています。
夢考房プロジェクト
夢考房には「夢考房プロジェクト」と呼ばれる学生の創作グループがあり,それへの支援も重要な活動の一つで す。これについては夢考房プロジェクトのページをご覧ください。