RoboCup世界大会へ参加すべきか?せざるべきか?

KIT夢考房チームはJapan Open 2010で中型ロボットリーグとヒューマノイドリーグ・キッズサイズで準優勝の成績を収めました。両チームとも世界大会の出場資格を得ていますが、中型ロボットリーグに関しては、ジャパンオープンでの試合内容があまりにも悪く、事前の準備も不十分だったので参加を辞退しました。

ヒューマノイドリーグ・キッズサイズについては、まだ正式な結論は出ていませんが、参加できるかどうかは微妙な状態です。SitiKチームに関しては3年前から世界大会の審査は通っていたのですが、Japan Openでは一点も取れない試合内容が続き学内の審査で不適格となりました。今年初めて一得点を取得し、準優勝することができ、いよいよ世界への挑戦だと思いました。歩行に関してはCIT Brainsには及ばないものの、非常に安定した動歩行制御であり十分世界と戦えるレベルにあると思います。後は、歩行とシュート動作をシームレスにいかにつなげるかです。

サッカーのシュート動作は一見簡単に見えますが、それほど簡単ではありません。ボールを蹴るための軸足をボールに対して数cmの精度に決めないといけません。そのためには、走り幅跳びのように、軸足が適切な位置にくるよう歩幅を修正する必要があります。この動作を世界大会までの残り一ヶ月でどこまで改善できるかです。これを解決しないと、世界大会に参加しても2次予選敗退、あるいはグループ分けによっては1点も取れず1次予選で敗退ということも大いにあるでしょう。また、ジャパンオープンで壊れたモータも多く、全体的に劣化が進み、予備品がほとんどないなどロジスティクの面も大いに不安です。

世界大会参加に関して、個人的な意見としては参加させてあげたいと思います。理由は2点あります。

第1点。SitiKは3年連続世界大会の出場資格を獲得していますが、過去2年チーム登録直前で出場辞退しています。今年のドタキャンすれば3年連続になり、来年の審査を通過することが難しくなるでしょう。世界大会の審査を通過しなければ、国内でどんなに強くなっても世界大会には出場できません。

第2点は学生の教育のためです。世界に行くことにより、今まで国内で見たものとは違う風景が見えるはずです。宇宙飛行士のように。それは行った人しかわからないものです。私も1年間の米留で世界観がずいぶん変わりました。

特に、今回の世界大会はシンガポールで開催され、現在世界で最も伸び盛りのアジアンパワーを実感できると思います。今の若い人はこれからはアジアの人たちと競うことになるでしょう。中国、韓国、ベトナム、タイなど。アジアンパワーは物凄いです。既に、ABUロボコンでは日本は優勝できない時代になりつつあります。

さらに、英語の必要性を実感するはずです。世界大会に出場すれば、英語でしか言葉は通じません。OBの中には1年目の世界大会で英語の必要性を痛感し、日本に戻ってから地道に英語の勉強に努め、3年目の世界大会ではペラペラになった学生がいます。

今のメンバーには失敗を恐れず果敢に挑戦してもらいたいと思います。世界大会参加はSitiKチーム発足以来の悲願であり先輩達は行けずに涙したものです。この悔しい気持ちを是非叶えてもらいたい。

ワシンポストの記事をこのブログで紹介しましたが、今の日本の若い人は堅実というか、頭が良いというのか安全と思われる道を選ぶ傾向にあります。考え方が保守的すぎます。このような考え方をしていると最近急成長著しい東南アジア諸国に追い抜かれるでしょう。安全と思われていたことが、時代の潮流に流されてきたことは歴史が証明しています。

KITの夢考房は学生の夢をかなえるところですから、学生は夢に向かって挑戦してもらいたいと思います。挑戦しなければ夢はかないません。夢がなければ夢考房は必要ないでしょう。

でむ

コメント

  1. KADOTA より:

    こんにちは。
    当方ブログにコメントをいただきありがとうございました。
    夢考房のことはいろいろと存じ上げております。
    ロボカップでのご活躍を祈念いたします。

    • demu より:

      KADOTAさん、

      コメントありがとうございます。

      RoboCup世界大会では日本は大変厳しい状況です。昨年、中型ロボットリーグに参加しました。優勝したドイツのRFC StuttgartチームはStuttgart大学チームですが、メンバーは若い教員、ポスドクなど9名の研究者が取り組んでいます。私は1999年からロボカップに参加していますが、昔見た顔ぶれです。準優勝のTech United Eindhovenは、ヨーロッパ最大の家電メーカ,フィリップスがスポンサーでそこの技術者が加わりEindohoven工科大学と合同チームを作っています。ロボットはフィリップスの技師が作成したものです。予算は潤沢にある印象を受けました。

      日本と海外は税制上や文化の違いがあり、日本はスポンサーを集めることが難しいこともあると思います。夢考房チームの場合はKITがスポンサーなので、日本の他チームよりは恵まれた環境にあると思います。ただ、夢考房は学生が一から開発することを基本としているので、海外の強豪チームと対峙することは簡単ではないと思います。それでも、果敢に挑戦してもらいたいと願っています。

      でむ

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