教育効果

夢考房ではどのような教育効果があるでしょうか?工学的な知識や技能を身につけることはいうまでもありませんが、一番重要な効果は社会に出てから必要にな社会人として生きていく力の鍛錬だということです。アメリカにいて感じることはアメリカ人はよく話し会うということです。これは何も大学だけではなく、一般の人も話あっているのをよくみかけます。別に内容が高尚というわけでもありませんがとにかくよく話しあいコミュニケーションをとりあっています。MIT(マサチューセッツ工科大学)が東大や京大と決定的に違う点があります。それは学生の多くが寮に住んでいる点です。個室はとても高いので多くの寮の部屋は相部屋です。寮というのもコミュニケーションやディスカッション能力を鍛錬するうえで重要です。夢考房は寮を完備していませんが、グループ活動を通じてそういった能力が鍛錬されるのだと思います。

人間形成の場
夢考房は,単に「もの創り」に必要な知識や技能を身に付ける場ではなく,現在の高等教育が十分に対応できていない「人間形成」の場で す。アメリカの大学では人間形成としてリベラルアーツ(一般教養)が重要視されています。そういった大学の多くは一クラス20名前後と少人数でディスカッションを中心として教育を行っています。日本の大学で一般教養教育がうまくいかなかったのは、大学発生の歴史的背景と教養の持つ価値観とそれを大人数でやろうとした点にあると考えます。金沢工大では建学当時から綱領として「高邁なる人間形成」つまり「人間味豊かな技術者,研究者として、高い道徳心と国際感覚を持った創造的で個性豊かな人材の養成を目指す」と述べ他大学ではやらないような一風変わった教育があります。 夢考房もその一つで、教職員が学生にその理念を押し付けるのではなく,夢考房活動を通して学生がその重要性に自然と気がつく人間形成の場となっています。

自主自立の精神
各プロジェクトの運営は,学生の手にゆだねられ予算管理,工程管理,部品発注など全て学生が実施しています。これは大会参加手続き,部品発注や予算の執行だけ ではなく、教育においても当てはまります。学生達は定期的に勉強会などを開催し必要な知識習得に努力しています。教職員はサポート役に徹していて多少の失敗は分かっていても,学生の自由な発想を尊重し,できるだけ彼らがやりたいようにやらせてい ます。当然学生は成功するときもありますが、失敗も数多くします。これでいいのです科学で一番重要なことは試行錯誤を重ねて、あきらめずに真理を探究することにあります。学生は失敗を通して学び 、次回は必ず改善に結びつけています。夢考房プロジェクトは自主自立の精神の基、運営されています。夢考房の学生は一般の学生と比較して非常に積極的で目の輝きが違ってい ます。

創造的な才能の育成
「もの創り」の基本姿勢として「設計から製造まで全て学生の手で実施する.」ことと「新しい技術に挑戦する(他人の真似をしない)」ことに重点をおき、創造的才能の育成を目指してい ます。 成果も少しずつ現れてきていて、競技会等での技術賞受賞や特許を出願しているプロジェクトもあります。

マネージメント能力夢考房プロジェクトは会社でのプロジェクトワークを小さくしたようなものです。学生は身をもってチーム活動を経験し、その活動を通じてリーダーシップ、フォロアーシップ 、マネージメント能力の大切さや難しさを実感し試行錯誤を重ねることにより、それらの能力を身に付けます。夢考房は実社会へ出る前の貴重な体験の場と なっています。

モラルプロジェクトの成功にはマネジメント能力がとても重要です。その最も基本となるのが時間厳守です。ソーラーカーでは「5分前の精神」が浸透していると聞きます。これによって単に時間を守る習慣を付けることに留まらず,全てに余裕を持って行動できるようになることを狙っている そうです。また,挨拶も人間関係の基本です。夢考房へ行くと著者の知らない学生も積極的に挨拶や会釈をしてきます。
さらに,安全管理上とても重要なことですが、夢考房では整理整頓が徹底されています。最近はこの伝統が学生に受け継がれて,学生同士が切磋琢磨しており,夢考房活動を通じて自然と道徳や規則が守られるようにな っています。

人脈の構築
本学は,地方の単科大学であり金沢にいるだけではどうしても見識が狭くなってしまいます。夢考房プロジェクトの多くは競技会に参加します。大会に参加すると日本や世界の大学の学生や先生,企業や研究所などの研究者らと知り合う機会を持つことができ見識が広ま ります。また,社会に出て非常に重要なことはいかにして優れた人脈を築くかということです。ロボカップの学生は、大会参加時に名刺を持参し,一大会で最低一人知人を作ることを目標に大会に参加してい ます。夢考房の卒業生の中には大学時代培った人脈を十二分に活用して外資系企業に就職したものもいます。

自尊心・愛校心・愛国心
夢考房プロジェクトの利点は,国内大会参加のための支援や,国内大会で結果を出し,実績が認められると国際大会参加への道が開かれる点です。
国内大会に参加することにより夢考房の学生は自分達が金沢工業大学を代表していることを意識するようになります。国内大会である程度の実績を上げると,学生は自信に満ち溢れ,金沢工業大学の学生であることに誇りを持ち,愛校心を覚えるようにな ります。面白いことに実績を上げるまではこのような現象を見ることができません。
世界大会に参加すると自分が日本人であることを再認識し,日本人として確固たる精神で大会に臨み、試合で世界の強豪チームを破り,勝ち進むにつれ愛国心を覚えるようにな りました。これは,2002年のサッカーワールドカップで日本の若者が自発的に国旗を振って日本代表を応援していたことと同じ理由だと考えられます。教職員が自尊心,愛校心,愛国心を持てと学生に説教したところで何の効果も ありません。そういったことに気がつく環境を学生に与えることが重要なことです。

国際性の涵養
夢考房ロボカッププロジェクトが参加しているロボカップ世界大会では,大会期間中はルールや審判の判定などについての会議が毎日開催され 、その場で世界各国のチーム代表者らが英語で白熱した討論を繰り広げています。そのような場所に参加した学生は,確固たる信念,語学力並びに交渉力の必要性を痛感し 、国際性を養うことができます。学部学生時代からこのような経験をできること自体教育上非常に重要なことで す。